社会保険の標準報酬月額は、まず入社時に(保険加入時)に決まり、その後も定期的に・または随時に、見直しが行われます。定期的な見直しが「定時決定」であり、要件に該当した場合に行われる見直しが「随時改定」です。随時改定は「月額変更」「月変」と呼ばれることもあります。
ここでは「随時改定」について、要件と時期、定時決定との違いなどについて紹介します。
標準報酬月額とは: 標準報酬月額とは、報酬額を一定幅に区切り、等級に分けたものです。厚生年金の場合は32等級あります。被保険者の報酬(給与)を元に算出された額を、その区分に当てはめて、等級が決定されます。 例えば、1ヶ月当たりの給与額が232,000円と計算された人は、「230,000円~249,999円」の範囲にあるため、それに対応する標準報酬月額「240,000円(厚生年金では第16等級)」とされます。 標準報酬月額は、健康保険や厚生年金保険の保険料や給付の額を計算する際の基準になる金額です。 |
随時改定とは?|標準報酬月額の変更
随時改定が起きるのは、固定給(固定的賃金)が変動し、かつ給与額が大幅に増減したときです。
随時改定は「4ヶ月目」
標準報酬月額が随時改定されるのは、固定給の変動月から起算して4ヶ月目です。3ヶ月間の給与を確認し、随時改定の要件に該当した場合に、4ヶ月目に標準報酬月額が改定されます。
社会保険では、「〇月給与」と表現するときは、「何月に支払われた給与なのか?」で判断します。つまり、支払日べースで考えるのです。 そのため、4月末日締め翌月25日支払いの場合、4月1日~4月30日分の給与は、社会保険では「5月給与」として扱われます。支払日が5月だからです。 なお、労働保険では「締切日ベース」で考えます。同じ期間の給与でも、社会保険と労働保険では呼び方が違うため、注意が必要です。 労働保険(年度更新)については、こちらの記事をご覧ください。 → 【令和8年度】労働保険年度更新|申告方法・納期限・納付方法 → 【令和8年度】労働保険年度更新|集計する賃金の範囲と2026年度の注意点 |
5月支払分の給与で固定給の変動があった場合は、5月・6月・7月に支払われた給与を調べて、随時改定に該当しているかをみます。
随時改定に該当している場合は「8月分の標準報酬月額から」改定されます。通常、社会保険料は翌月控除になるため、給与計算に新しい標準報酬月額が反映されるのは9月支払分の給与からになります.
例:10日締め当月25日支払いの会社(社会保険料は翌月控除)の場合
・5月25日支払分で固定給が変動した
・5月25日・6月25日・7月25日支払分の給与を確認
・随時改定に該当した場合は「8月分」から標準報酬月額改定
・9月25日支払分給与以降、新しい社会保険料が給与から控除される
では、随時改定に該当するのは、どのような場合でしょうか?
随時改定(月変)の要件
随時改定に該当するのは、次の要件の全てに該当した場合です。
・固定給が変動した
・従前と2等級以上の差が生じた
・3ヶ月間の基礎日数が17日以上
順に説明します。
固定給が変動
固定給が変動することが、随時改定のきっかけになります。固定給の変動がない場合は、たとえ給与が大きく増減しても随時改定は起きません。
固定給の変動に該当するのは?
「固定給の変動」は意味が広く、基本給の増減のみを指すわけではありません。
固定給の変動として扱われるものを例示します。
・基本給の昇給または降給 ※月給だけでなく時給単価の増減なども該当します。
・新しい手当の支給開始または廃止 例:子どもが生まれて家族手当〇〇円がついた
・手当額の変動 例:鉄道運賃の値上げで、1ヶ月分の通勤手当が増えた
・給与体系の変動 例:日給者が月給者になった など
2等級以上の差
固定給の変動月から起算して3ヶ月間の給与をもとに算出された標準報酬月額が、従前の標準報酬月額と比べて「2等級以上」変動している必要があります。
月に「17日以上」
随時改定では、固定給の変動月以後3ヶ月間の給与を確認しますが、その3ヶ月間のどの月も、賃金支払基礎日数(給与計算の対象である日数)が「17日以上」(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)あることも要件です。
1ヶ月でも17日未満の月があるときは、随時改定に該当しません。
随時改定の手続き|月額変更届の提出
随時改定に該当した場合は、「月額変更届」を提出する必要があります。
月額変更届の提出期限や提出方法についてみていきましょう。
月額変更届の提出時期
月額変更届は、要件に該当した場合に「すみやかに提出する」こととされています。つまり、固定給の変動月から起算して3ヶ月目の給与が確定し、随時改定の要件を満たすと判断したときは、月額変更届を早めに作成・提出する必要があります。
提出先と提出方法
協会けんぽ(全国健康保険協会)所属の事業所の場合は、日本年金機構または事務センターに提出します。紙の書類で作成・提出するほか、電子申請もできます。
健康保険組合所属の事業所の場合は、提出先や提出方法が異なる場合があるため、所属健康保険組合のルールに従って提出してください。
算定基礎届と月額変更届の違い|定時決定と随時改定
月額変更届と似た手続きに、算定基礎届があります。どちらも標準報酬月額を決定または変更する手続きですが、どのように違うのでしょうか?
算定基礎届は年1回
算定基礎届は、年に1回、原則として7月1日~7月10日の期間に提出します。算定基礎届により決定された標準報酬月額は、その年の9月分から翌年の8月分まで適用されます。
これを「定時決定」といいます。定時決定は、原則として社会保険の被保険者全員に行われます。
月額変更届は要件に該当したときのみ
一方、月額変更届を提出するのは、要件に該当したときだけです。決まった提出月はなく、要件に該当した場合に届け出ることになります。
これを「随時改定」といいます。随時改定をするのは、要件に該当した人のみです。
月額変更のことを、省略形で「月変(げっぺん)」ということがあります。8月に随時改定する(標準報酬月額が変わる)ことを「8月月変」と言ったりします。 もっと短く「8月変」と呼ばれることもあります。 4月給与で固定給の増減があり、随時改定する場合は「7月月変」になりますね。 |
算定基礎届については、こちらの記事で詳しく説明しています。
→ 【令和8年度】算定基礎届|期限と提出先・ケース別の取扱い
こんな時どうする?|月額変更届
月額変更届を作るときに、迷いがちなケースを紹介します。
月の途中で手当がアップし、初月が日割計算のときは
月の途中で固定給が変動し、日割計算になった場合は、日割されている月は除外し、1ヶ月分の手当が支給された月から3ヶ月をカウントします。
15日締め当月末日支払いの会社で、4月1日から扶養手当がついた場合を考えてみましょう。4月末日支払いの扶養手当が日割されているときは、4月末日支払い分の給与は除外し、5月・6月・7月支払い分の給与を平均して2等級以上変わっているかを確認します。
月変を見落として、半年以上経ってしまった
見落としに気づいたら、すみやかに月額変更届を提出してください。その後、本来の随時改定月からの社会保険料が計算され、それ以後の社会保険料で調整されます。
「9月月変予定」で算定基礎届を出したら、随時改定に該当しなかった
算定基礎届を提出するときに「9月に月額変更の予定」として算定基礎届を提出しなかった場合でも、「7・8・9月の給与を確認したところ、随時改定に該当しなかった」ということもあるでしょう。こうした場合は、速やかに算定基礎届を提出することになります。

随時改定は、標準報酬月額を変更する重要な手続きですが、見落とされがちなものです。
随時改定を見落とさないために、社会保険の担当者は、固定給の増減があったときは(それがたとえ少額でも)チェックしておく必要があります。ほんの数十円固定給が上がっただけでも、続く3ヶ月間に残業などが多ければ随時改定になることもあるからです。
月額変更届の提出が遅れると、遡及で標準報酬月額が変わり、社会保険料も調整が行われます。そうなると給与計算も煩雑になり、傷病手当金などの額にも影響が出ることがあるため、随時改定のチェックは確実に行うようにしましょう。
参考資料:
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html
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