社会保険では、9月分から標準報酬月額が新しくなります。7月に提出した算定基礎届をもとに定時決定が行われ、標準報酬月額(等級)が決まります。
そして新しい標準報酬月額は、原則として9月分から翌年8月分まで適用されます。
ここでは、新しい標準報酬月額が給与計算に反映される時期・従業員への通知方法について紹介します。
標準報酬月額が変わるのはいつ?
定時決定による標準報酬月額は「9月分」から適用されます。
賃金の締切日や支払日に関わらず「9月分から」です。
では、給与計算で新しい標準報酬月額を使い始めるのは、何月からでしょうか?
通常の「翌月徴収」の会社では、10月支払いの賃金からです。
給与計算への反映月|定時決定
社会保険料は「前月分を当月に支払う賃金から」控除することができます。
つまり、9月分の社会保険料が控除されるのは、翌月(10月)に支払われる賃金からです。
例えば、
20日締め・当月末日支払いの場合、10月に支払われる賃金は「9月21日~10月20日」の分です。この会社では、10月31日に支払われる賃金から、新しい標準報酬月額で計算された社会保険料になります。
また、末日締め・翌月20日支払いの場合、10月に支払われる賃金は「9月1日~9月30日」の分であり、10月20日支払いの賃金から社会保険料が変更されます。
ただし、中には「社会保険料は当月徴収」としている会社も存在します。
そうした会社では、9月分の社会保険料を9月に支払われる賃金から控除することになります。
社会保険料を「翌月の賃金から控除する」のはなぜ?
社会保険料を「翌月」の賃金から控除する根拠は、法律の規定にあります。
| 健康保険法(第167条第1項) ・事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、 被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。 厚生年金保険法(第84条第1項) ・事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、 被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる。 |
これらの条文は、どちらも「控除することができる」という表記になっています。
そのため、標準報酬月額の変わり目である「9月分」を、10月に支払われる賃金から控除している会社は、条文に則った処理をしているといえます。
では、当月分の社会保険料を当月の賃金から差し引くことは、間違いなのでしょうか?
上の条文をよく読むと「控除することができる」とは書いてありますが、「控除する」「控除しなければならない」という表現ではありません。
つまり「9月分の社会保険料は10月支払いの賃金から差し引いていいよ」とは言っていますが、「9月分の社会保険料は10月支払いの賃金から引くのが正しい処理だ」と言い切っているわけではないのです。
このことから、いわゆる「翌月徴収」以外の控除方法が否定されているとはいえず、実際に「当月徴収」(9月分の社会保険料は9月支払い賃金から控除する)の運用をしている会社もあります。
それでも、一般的には「翌月徴収」が採用されているため、「社会保険料は翌月徴収」と教えられた給与計算担当者もいるでしょう。
しかし「当月徴収」で給与計算をしている会社も存在し、その扱いはただちに間違いとはいえないのです。
標準報酬月額の変更で何が変わる?
標準報酬月額の変更が影響するものを挙げてみましょう。
・賃金から控除される社会保険料(健康保険料・介護保険料・子育て支援金・厚生年金保険料)が変わる
・傷病手当金や出産手当金などの計算基礎となる額が変わるため、給付額に影響することがある
・高額療養費の自己負担限度額が変わることがある
そして、将来受け取る老齢厚生年金にも影響します。障害厚生年金や遺族厚生年金も同様です。
このうち、多くの従業員が関心を持つのは「賃金から控除される社会保険料」でしょう。
従業員に通知|新しい標準報酬月額
定時決定や随時改定などにより標準報酬月額が変更されたときは、会社はその内容を従業員に通知する必要があります。
通知の方法は任意とされていますが、以下が考えられます。
・個人別の給与明細書に記載する
・エクセルなどで作成した通知書を配布する
通知書のエクセル例は、日本年金機構のサイトからダウンロードできます。
通知様式の例(日本年金機構)
また、日本年金機構から会社に交付される「標準報酬月額決定(改定)通知書」(個人別形式のもの)を本人に渡す方法もあります。
社会保険料の変更は、従業員の手取り額に直結するものです。
こうした通知を的確に行うことは、従業員の安心感につながります。
なお、標準報酬月額は重要な個人情報の一つですから、十分に注意して取り扱うようにしてください。

多くの会社の給与計算担当者にとって、10月は忙しい月だと思います。
給与計算のときになって慌てないよう、新しい標準報酬月額と控除する社会保険料を事前に整理・確認してから、給与計算に臨みましょう。
参考URL:
日本年金機構 被保険者への通知
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha2/20120330-04.html
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