老齢年金を受給している人が厚生年金保険に加入して働くと、年金が支給調整されることがあります。ここでは、支給調整の仕組みや計算例、調整される年金の種類などについて紹介します。
在職老齢年金の仕組みとは
老齢厚生年金の受給権者が、同時に厚生年金保険の被保険者でもある場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給調整(支給停止)されることがあります。
わかりやすく言えば「老齢厚生年金をもらえる人が、会社員として働くと、年金の一部が止まることがある」ということです。
なぜ年金が調整される?|在職老齢年金
在職老齢年金の制度は「一定以上の収入がある人は、年金給付を調整することで、制度を支える役割も担ってもらう」との考えに基づいています。
年金を受給しながら働いている人全員が、調整されるわけではなく、対象者は「給与収入と年金収入の合計額が一定額以上の人」のみです。
更に、全額停止されるのは給与や年金の額が非常に高い人に限定され、多くの人は「一部のみの支給停止」となっています。
次は、支給調整の計算方法を説明します。
在職老齢年金の支給停止額の計算式
支給停止額は、年齢に関わらず、下の式で計算します。
支給停止額 (月額)=(総報酬月額相当額+基本月額-510,000円)÷2 |
計算式に出てくる用語や金額について、順に説明します。
◇ 「510,000円」とは:
支給停止額計算の基準になる金額で、「支給停止調整額」といいます。
「510,000円」は2025年度の額で、この額は毎年度見直されます。
◇ 総報酬月額相当額とは:
「その月の標準報酬月額+その月以前12ヶ月の標準賞与額の合計額÷12」のことです。 つまり、現在の月給と過去1年の賞与を月割りを合算した額になります。
賞与を割り振った1月分の給与収入、とご理解ください。
◇ 基本月額とは:
老齢厚生年金(報酬比例部分)の1ヶ月分の額です。
加給年金(年金版の扶養手当のようなもの)が加算されている人も、加給年金は除いて計算します。
つまり「年金と給料の合計額が 月510,000円を超える人は、超えた分の2分の1の額が停止される」のです。
在職老齢年金の計算例
66歳のAさんは、基本月額が150,000円、総報酬月額相当額が440,000円の支給停止額を計算してみましょう。
(150,000円+440,000円-510,000円)÷2=40,000円
支給停止額は「40,000円」です。老齢厚生年金の額は「150,000円-40,000円」で110,000円になります。
支給停止は厚生年金部分のみ
在職老齢年金の仕組みにより支給停止されるのは、厚生年金の部分だけです。
老齢基礎年金は、支給調整されません。
特別支給の老齢厚生年金は調整される?
「特別支給の老齢厚生年金」とは、生年月日により60歳台前半に受給できる年金で、65歳からの老齢厚生年金とは別の年金です。
この「特別支給の老齢厚生年金」も支給調整の対象です。
繰上げ・繰下げと在職老齢年金の関係
繰上げ受給・繰下げ受給をした場合も、減額・増額後の年金額に、在職老齢年金の仕組みが適用されます。
そのため、繰上げや繰下げを考える場合は、年金額のみで判断せず、繰上げ時や繰下げ時の給与収入を予測してみることも、判断材料になるかもしれません。
在職老齢年金が適用されない人とは
前述のとおり、在職老齢年金は、厚生年金保険の被保険者が老齢厚生年金を受給する場合の制度です。
そのため、厚生年金保険の被保険者でない人には、在職老齢年金が適用されません。
在職老齢年金が適用されないのは、次のような人です。
・自営業者
・会社との契約が雇用ではなく「業務委託」の人
・厚生年金保険が適用されない短時間勤務者
上のような人は、年金額や収入額に関わらず、支給停止されることはありません。
2026年4月|在職老齢年金制度が変わります
在職老齢年金の制度は、2026年4月から変更されます。 2025年度に「510,000円」だった支給停止調整額が、2026年4月からは「620,000円」に引き上げられる予定です。
今回の制度見直しの背景には、働き続ける高年齢者の増加や、深刻な人材不足への対応などがあります。
この見直しにより、老齢年金の支給停止を気にせず就労できる高年齢者が増え、労働市場で有効に活用されることが期待されています。
ぉ参考資料:
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
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