解雇予告手当|計算方法と社会保険料・所得税

解雇予告手当の計算は、労働基準法に則って正確に行う必要があります。解雇予告手当に社会保険料はかかりませんが、所得税と復興特別所得税は課税されます。ただし一定の書類の提出がある場合は、所得税と復興特別所得税を控除しなくてよいケースもあります。

ここでは、解雇予告手当の計算方法、計算例、社会保険と所得税の扱いなどについて紹介します。

解雇予告手当の計算方法は?

解雇予告手当の額は、即時解雇の場合「平均賃金の30日分以上」とされています。(労働基準法第20条)
そのため、解雇予告手当を計算するときは、まず平均賃金を算出する必要があります。
計算の順序は「1 平均賃金の計算」「2 解雇予告手当の計算」です。

1 平均賃金の計算式は?|含める手当と端数処理

平均賃金は、原則として次の計算式で求めます。


 原則:平均賃金=直近3ヶ月分※の総支給額÷その期間の総日数
 最低保障:平均賃金=直近3ヶ月分の総支給額÷その期間の労働日数×60%

 ※賃金の全部または一部が時給制や日給制等になっているときは、
 「最低保障」の計算をした上で、金額の高い方を平均賃金とします。

総支給額には、基本給の他、残業手当、家族手当、通勤手当などの各種手当が含まれます。ただし賞与は含まれません。総日数とは、総暦日数のことです。

平均賃金の計算で端数が出たときは、銭未満(少数点3位以下)を切り捨てます。

2 解雇予告手当の計算は?|計算式と端数処理

即時解雇の場合、解雇予告手当は、次の計算式で求めます。

 解雇予告手当=平均賃金×30日(以上)

解雇予告手当の計算で端数が出た場合は、円未満を四捨五入します。

解雇予告手当の計算例

次の事例の従業員を即時解雇する場合の解雇予告手当を計算してみましょう。

(事例)
・過去3ヶ月分の総支給額 905,405円
・その期間の総日数 92日
・月給者、即時解雇

平均賃金: 905,405円(総支給額)÷92日(総日数)=9,841円35銭(平均賃金)
解雇予告手当: 9,841円35銭(平均賃金)×30日=295,240.5円≒295,241円

上の計算により、295,241円以上の解雇予告手当が必要になります。

15日前に解雇予告した場合は?

従業員を即時解雇する場合は平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払う義務があります。しかし30日前までに予告したときは解雇予告手当を支払う必要がありません。
では、20日前に予告した場合は?

その場合の解雇予告手当は、3日に足らない日数分を支払うことになります、

必要な予告手当日数=30日-20日=10日分
9,841.35円(平均賃金)×10日=98,413.5円≒98,414円
この場合の解雇予告手当は、98,414円以上です。

解雇予告手当に社会保険料はかかる?

解雇予告手当には、社会保険料はかかりません。解雇予告手当は退職に伴う一時金であり、社会保険料の対象となる賃金(給与や賞与)に該当しないからです。

そのため解雇予告手当を支払うときは、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料等を差し引く必要はありません。また、会社のみが負担する労災保険料の対象からも除外されます。

解雇予告手当に所得税はかかる?

解雇予告手当には、退職所得として所得税が課税されます。そのため、解雇予告手当を支払うときは、原則として20.42%の「所得税と復興特別所得税」を源泉徴収する必要があります。
ただし、所得税および復興特別所得税の源泉徴収が不要な場合もあります。

「退職所得の受給に関する申告書」の提出があるときは

解雇される従業員が「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているときは、退職所得控除が適用されます。解雇予告手当(および退職金等の合計額)が退職所得控除の範囲内であれば、所得税と復興特別所得税を控除する必要はありません。

※退職所得控除とは…その人の勤続年数により計算されるもので、最低額は80万円です。
 →退職所得控除について、詳細は国税庁のサイトをご参照くだだい。
「退職所得の受給に関する申告書」は、国税庁のサイトからダウンロードできます。

解雇予告手当の計算は

解雇予告手当の計算を誤ると、後から訂正して差額を支払わなければなりません。解雇予告手当は、労働基準法で会社に支払義務が課せられているからです。そのため解雇予告手当は正確な計算が求められます。解雇予告手当の計算で不明点があるときは、社会保険労務士にお尋ねください。

参考資料:
解雇予告手当の計算:神奈川労働局 平均賃金について【賃金室】
解雇予告手当の課税:国税庁 No.2736 解雇予告手当や未払賃金立替払制度に基づき国が弁済する未払賃金を受け取ったとき(退職所得)
退職所得控除:国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
退職所得の受給に関する申告書:国税庁 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)

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