休業手当とは|概要・社会保険料・所得税

休業手当とは、事業主の都合で従業員を休業させたときに、従業員に支払われる手当です。休業手当の支払いは、労働基準法第26条により事業主に義務づけられており、違反すれば罰則もあります。

ここでは、休業手当の概要や支給額、休業手当と社会保険料・所得税の基本的な関係について説明します。
→ 休業手当の計算方法・計算例はこちら
→ 休業手当が標準報酬月額に与える影響についてはこちら

休業手当とは?|労働基準法第26条の基本ルール

休業手当の支払義務が発生するのは「従業員が働ける(=労働の提供ができる)状態にあるのに、会社の都合で休業させたとき」です。

このときに、労働の提供がなかったことをもって無給にしてしまうと、従業員側は経済的な損害を被ります。従業員側としては「本来は働いて賃金が得られるはずだった」からです。

そのため労働基準法第26条は、従業員の生活保障として「使用者の責めに帰すべき事由」による休業があった場合は、事業主に休業手当の支払い義務を課しているのです。

「使用者の責めに帰すべき事由」の具体例

休業手当支払いの要件である「使用者の責めに帰すべき事由」とは、どのようなものを指すのでしょうか? 例を挙げてみましょう。

・顧客や受注の減少などによる休業
・工場設備の不備や修繕による操業停止
・親会社の経営不振による資金や資材不足による休業
・労務可能な従業員への事業主判断の休業命令(伝染病まん延時等) など

ちなみに民法では

民法第536条2項では、事業主に責任のある休業の場合は、(60%ではなく)100%の賃金を要求できるとしています。
ただし、この民法の規定が適用されるのは、事業主の故意や過失、信義則上それと同視されるような事由がある場合です。

一方、労働基準法第26条の「事業主の責めに帰すべき事由」の方は、故意や過失がない場合でも、休業事由が事業主側に起因する場合は、広く該当します。

ただし、事業主の責任ではない「不可抗力による休業」は、休業手当の対象にはなりません。
不可抗力とは「事業の外部から発生し」「事業主が予見・回避できないもの」をいいます。例えば、大型の地震などが挙げられます。

民法による請求が可能な場合に、100%の請求をすることは問題ありませんが、必ず認められるとは限りません。
他方、労働基準法の休業手当は、罰則つきの強行法規により、事業主に支払いが義務づけ、従業員の保護を図っています。

休業手当の額はいくら?|平均賃金の60%以上

労働基準法第26条により、休業手当の額は、休業1日につき「平均賃金の100分の60以上」と定められています。
なお平均賃金とは「その人の1日当たりの賃金」のことで、原則として直近3ヶ月間の賃金をもとに算出します。

 
 【休業手当の計算式】
 休業手当=平均賃金×60/100×休業させた日数

→ 休業手当の具体的な計算方法や端数処理の仕方は、こちらの記事をご覧ください。
→ 平均賃金について詳しく知りたい場合はこちらの記事をご参照ください。

1日のうち一部だけを休ませた場合は

1日のうち一部、例えば午後のみを休業させた場合、休業手当の支払い義務はあるのでしょうか?
その場合は、就労分の賃金が「休業手当1日分の額に満たない」ときは、差額を支払う決まりになっています。

事例:
事業主の都合により、9:00~12:00は出社し、その後休業となった場合で考えてみましょう。
9:00~12:00の労働により支払われる賃金が「3,900円」で、適正に計算された休業手当が「4,300円」だったとき、事業主は従業員に、差額の「400円」を支払う義務があります。

通常より所定労働時間が短い日に休業があった場合は

パート従業員などは、日によって所定労働時間が異なることがあります。
月曜日と火曜日の所定労働時間が7時間、水曜日の所定労働時間が5時間の場合で、水曜日に事業主都合の休業があったときはどうなるのでしょうか?

こうした場合は、所定労働時間が短い日に休業させた場合も、平均賃金の60%が支払われます。
上記の場合、所定労働時間が長い月曜日に休業しても、所定労働時間が短い水曜日に休業しても、支払われる休業手当の額は同額です。

休業手当は社会保険料や所得税の対象?

休業手当は、社会保険料や所得税との関係においては「賃金」とされます。
ここでは、各種の社会保険や所得税について説明します。

休業手当にかかる雇用保険料

休業手当にも、雇用保険料がかかります。
賃金計算期間の一部に休業手当の支払いがあった場合でも、休業手当を含めた総支給額に雇用保険料率を乗じて雇用保険料を計算し、賃金から控除します。

休業手当にかかる健康保険料・厚生年金保険料

社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)の額は、毎年の定時決定(7月に提出する算定基礎届)によって決まり、固定給の大きな変動がない限り、1年間、同額が控除されます。

そのため、休業手当が支払われた月の給与から差し引かれる社会保険料も通常の月と同じ額です。

休業手当の標準報酬月額への影響

休業手当は、社会保険上は「賃金」として扱われるため、定時決定(算定基礎届)や随時改定(月額変更)に影響することがあります。

算定基礎届の対象月に休業手当が支払われた場合は、7月1日時点で休業が解消されているか否かにより、標準報酬月額の算定方法が異なります。

また、休業が長期に及ぶ場合などは、随時改定(月額変更)の対象になることもあります。

休業手当が支払われた場合の算定基礎届や月額変更届については、こちらの記事をご覧ください。
→  休業手当と社会保険|定時決定・随時改定

休業手当にかかる所得税

労働基準法第26条の休業手当は、賃金として給与課税されます。
つまり、通常の賃金と同様に所得税を計算し、控除を行います。

「休業補償」と「休業手当」の違いに注意

休業手当と似た名称のものに、労働基準法第76条の「休業補償」があります。
休業補償とは、従業員が業務災害により休業した場合に支払われる補償です。

休業補償は非課税で、社会保険料もかかりません。休業手当とは性質が異なるため、混同しないよう注意しましょう。

参考資料:
e-Gov法令検索 労働基準法
国税庁 労働基準法の休業手当等の課税関係
日本年金機構 標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集

→ 休業手当とは|計算方法・計算例

→ 休業手当と社会保険|定時決定・随時改定

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