傷病手当金とは|要件と支給額

傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガで会社を休み、賃金(報酬)を受けられないなど一定要件を満たしたときに支給されます。健康保険法第99条に定められた法定の給付金です。

傷病手当金の支給要件

傷病手当金は、次の全てを満たした場合に、申請により支給されます。
・病気やケガの療養のため労務不能
・継続3日の待期期間を満たしている
・賃金が受けられない

任意継続被保険者は?|傷病手当金

任意継続被保険者は傷病手当金を受給できません。
ただし、任意継続をする前(退職前)に傷病手当金の受給資格を満たしていた場合に限り、資格喪失後の継続給付として引き続き受給できる場合があります。(健康保険法第104条)

病気やケガの療養」の範囲は?

・傷病手当金の対象となる「病気やケガ」は、業務外の事由によるものです。業務または通勤に起因する病気やケガは、労災保険で補償されます。
・自宅療養をしている期間も、傷病手当金の対象となります。
・美容整形は病気の治療とみなされないため、手術などで休業しても傷病手当金の対象となりません。

「労務不能」とはどんな状態?

「労務不能」とは、傷病が原因で「それまで従事していた業務が遂行できない状態」のことで、労務不能か否かは、医師の意見をもとに保険者(健康保険組合など)が判断します。

通常の業務よりも軽めの仕事をしたり、短時間のみ出社したりした場合も、賃金が出ていれば、通常は労務不能と判断されません。

待期期間の「3日」には土日も含まれる?

病気やケガにより連続3日以上休業することで、待期期間が完成します。
傷病手当金が受給可能になるのは、休業4日目以降です。

待期期間には、次の日が含まれます。
・土日など会社の公休日
・年次有給休暇を取得した日

土日が休みの会社で金曜日から休み始めた場合、金土日の3日で待期期間が完成し、翌月曜日以降は傷病手当金の受給が可能になります。

傷病手当金の待期期間中に、従業員が年次有給休暇を取得することも可能です。この場合は賃金が支払われるため、従業員は待期期間中も欠勤控除されず、減収を避けることができます。
有給休暇の取得は本人の申し出によりますが、会社としては制度の概要(待期期間中も有休取得が可能であること)をあらかじめ本人に知らせておくとよいでしょう。

賃金が出ていても傷病手当金は受給できる?

労務不能で休業中でも、会社によっては賃金の一部が支払われることがあります。こうした場合は、その額が傷病手当金より少額のときは、差額が支給されます。

よくある例として、通勤手当が挙げられます。「1ヶ月分」「6ヶ月分」等の通勤手当が出ている場合は、休業日分の通勤手当も支払われていることになります。そのため、休業日分の通勤手当は傷病手当金の額から差し引かれます。

傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給期間は、支給開始日から起算して「通算1年6ヶ月」です。
途中で傷病が良くなって出勤した場合でも、再び休業が始まった場合は、出勤した期間を除いて1年6ヶ月をカウントします。
なお「支給開始日」とは、待期期間が満了した「4日目」を指します。

傷病手当金の支給額

 傷病手当金の額(1日あたり)=
(支給開始日の属する月以前1年間※の標準報酬月額の平均額÷30)×2/3

被保険者期間が1年に満たない場合は、次のうち低い方の額を使います。
1 支給開始日以前の継続した期間の標準報酬月額の平均額
2 前年度9月30日の全被保険者の標準報酬月額の平均額(全国健康保険協会の場合、支給開始日が2025年4月1日以降のときは 320,000円)

傷病手当金の計算例

傷病手当金を、以下の事例で計算してみましょう。

・支給開始日 2025年5月2日
・標準報酬月額 2025年1~5月…410,000円、2024年6月~12月…380,000円
・休業期間(待期期間を除く)30日
・賃金の支給なし

1日あたりの傷病手当金=1年間の標準報酬月額の平均額÷30×2/3
直近12ヶ月の標準報酬月額の平均額÷30=13,083.333…
 →1の位を四捨五入し、13,080円
13,080円×2/3=8,720円
8,720円×30日=261,600円

上記の計算により、傷病手当金の1日あたりの額は「8,720円」、30日分の総額は261,600円となります。

休業が長引きそうなときは|会社の注意点

私傷病休業により賃金が支払われない場合でも、社会保険料や住民税の支払いは発生します。しかし控除元の賃金がないため、従業員に別途支払ってもらう必要があります。
休業する従業員には、社会保険料と住民税の額と支払方法(会社への振込など)を、事前に説明しておきましょう。

傷病手当金の要件やおおまかな額、休業中に支給された賃金の算定方法など、ご不明点がある場合は社会保険労務士にご相談ください。
→お問合せフォームはこちらです

参考資料:
e-Gov法令検索 健康保険法
全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)

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