再雇用とは|勤務延長との違い

再雇用とは、定年に達した従業員について一旦退職の手続きをし、新しく雇用契約を結び直して引き続き雇用する制度です。定年後の継続雇用制度の一つです。

65歳までの雇用確保と会社の義務

従業員が希望した場合、会社は従業員が65歳になるまで安定した雇用を確保する義務があります。これは、高年齢雇用安定法第9条に定められた会社の義務です。

定年がない会社や定年が65歳以上の会社であれば、問題はないでしょう。
しかし定年が65歳未満の会社は、次の3つのうちいずれかを選び、従業員が65歳まで働き続けられる環境を作る必要があります。

 1 定年の廃止
 2 65歳以上への定年引き上げ
 3 継続雇用制度の導入

このうち一番多く採用されているのは「継続雇用制度の導入」です。
2024年に厚生労働省が公表した調査結果でも、次の内訳になっています。

・定年を廃止している企業 3.9%
・定年が65歳以上の企業 28.7%
・継続雇用制度を導入している企業 67.4%
出典:厚生労働省 令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

導入率が高い「継続雇用制度」とは、どのようなものでしょうか? 

継続雇用制度とは?|勤務延長と再雇用

継続雇用制度とは、定年に達した従業員を同じ会社で雇用し続ける制度で、「勤務延長」と「再雇用」があります。この2つの違いは、定年到達時に退職手続きをするか否かにあります。

勤務延長とは

「勤務延長」とは、従業員が定年に達しても退職手続きを取らず、そのまま雇用し続ける制度です。一般的に、定年年齢になっても雇用契約がそのまま維持され、仕事内容・雇用形態・賃金などに変更はありません。定年が先送りされるイメージです。

勤務延長には、次の特徴がみられます。
・定年に到達しても、原則として特別な手続きは必要なし
・業務や環境に慣れた従業員を、そのまま雇用できる
・基本的な処遇が変わらないため、従業員のモチベーションが維持しやすい
・人件費抑制の効果は、再雇用より低め

再雇用とは

「再雇用」は、定年到達時に退職手続きをした上で、新しく契約を結び直す方法です。雇用契約をし直すため、雇用形態・労働日数・労働時間・仕事内容・賃金などの処遇が、大きく変わることが少なくありません。

再雇用の特徴は次のとおりです。
・退職手続き・再雇用手続き・諸条件の調整・本人との事前面談など、人事担当者の手間がかかる
・賃金が大きく低下する場合、従業員のモチベーション低下リスクがある
・個別に再雇用後の処遇を調整できる
・人件費の抑制効果が高め

特に、人件費の抑制効果は注目される点でしょう。年功制が残る日本では、年齢が高くなるほど賃金が上がる傾向がありますが、再雇用後の条件によっては、そうした高い賃金をリセットすることが可能です。

再雇用後の処遇

再雇用後の条件は会社や個人によって様々ですが、一般的に次のような傾向がみられます。
・労働時間や労働日数を短縮し、嘱託やパートとして雇用する
・1年更新の有期雇用契約になることが多い
・賃金は低下することが多い

賃金を引き下げるときの留意点

再雇用では賃金が大きく低下することが少なくありません。しかし再雇用された従業員にも、同一労働同一賃金の原則は適用されます。そのため、職務や職責、労働時間などが変わらないにもかかわらず、賃金だけを下落させると、トラブルになる可能性があります。

再雇用時に賃金を引き下げるときは「労働時間や労働日数を短縮する」「仕事の責任を軽減する」など労働条件を変更した上で、時短などに対応する分を減額する方法が広く使われています。
賃金を引き下げるときは、そうした合理的理由が必要です。会社側が賃金引下げの理由を明確に説明することで、従業員の納得も得やすくなるでしょう。

賃金低下への対処|再雇用時に活用できる制度

再雇用時の賃金低下は、従業員の生活に直結する問題です。そのため会社は、生活に必要な手取り額を確保できるよう配慮すべきでしょう。

再雇用で賃金が低下したときに活用できる制度として「同日得喪」「高年齢雇用継続給付」が挙げられます。
同日得喪とは、社会保険の資格喪失と資格取得を同時に行うことで速やかに標準報酬月額を引き下げる手続きです。同日得喪の手続きを取れば随時改定を待たずに社会保険料が下がり、従業員の手取り額が極端に低くなることを防げます。

高年齢雇用継続給付とは、再雇用などで賃金が一定以上下落したときに受給できる雇用保険の給付金です。給付金は従業員の口座に直接振り込まれ、従業員の生活費に寄与します。

どちらの制度も従業員の手取り額を守るために有効ですが、具体的にどのくらい効果があるのかは、賃金額や賃金低下率によって異なります。
同日得喪をしたときのシミュレーション金額については、こちらの記事で説明しています。
→「同日得喪とは|再雇用後に活用」

充分な説明や配慮が必要

再雇用制度には「従業員個人の状況に合わせて条件を調整しやすい」「人件費を抑制しやすい」といった利点があります。しかし雇用条件(特に賃金)が変動するケースが多いことから、従業員への説明や面談を充分に行い、必要な配慮をすることが会社に求められます。

再雇用後も能力を発揮して働いてもらうためには、法令を遵守するだけでなく、従業員に納得感や安心感を持ってもらうことが大事です。特に賃金設定や社会保険の手続き、給付金の活用方法などは実務上の判断が難しいこともあるため、社労士にご相談いただくと安心です。
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参考資料:
e-Gov法令検索 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
厚生労働省 高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)
厚生労働省 令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します

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