平均賃金とは、特定の従業員に支払われている「1日当たりの賃金」のことです。
労働基準法では、従業員の生活保障のために、会社に支払義務を課した手当があります。(例えば、会社都合で従業員を休業させた場合には、会社に「休業手当」の支払義務が発生します。)
平均賃金は、こうした手当の計算に用いられます。

平均賃金の計算方法
平均賃金は、原則として直近3ヶ月間の賃金総額を、その期間の総日数で除して計算します。ただし、賃金の一部または全部が、時給・日給・出来高給で支払われる人については、特別な計算方法があります。
まず、原則の計算式から説明します。
| 原則の計算式: 平均賃金=算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額/3ヶ月間の総日数 | 
しかし、原則の式で計算すると、労働日数の少ないパート従業員などは、平均賃金が不当に低い額になることがあります。そのため日給者や時給者等については、次の「最低保証額」の計算をして原則の計算と比較し、有利な方を平均賃金とします。
| 最低保障額の計算式: 平均賃金=算定事由発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額/3ヶ月間の労働日数×60/100 | 
算定事由発生日とは?
 休業手当…休業した日(2日以上の場合は最初の日)
 解雇予告手当…従業員に解雇を通告した日
 災害補償…労災事故が発生した日、または業務上疾病が確定した日
「直近3ヶ月」とは?
「直近3ヶ月」は、賃金締切日がある場合は、直近の賃金締切日以前の3ヶ月をカウントします。
20日締め・当月25日支払いの従業員に対し、5月10日に解雇通告をした場合、平均賃金の計算に用いる期間は、「3月21~4月20日」「2月21日~3月20日」「1月21~2月20日」です。
平均賃金の計算に含まれる手当・含まれない手当
「直近3ヶ月の賃金」には、基本給のほか、残業手当や通勤手当、皆勤手当など各種手当を含みます。
ただし、賞与など3ヶ月を超える期間ごとに支払われるものは、平均賃金の計算に使用しません。また、傷病見舞金や退職手当なども除外されます。
なお、通勤定期代を3ヶ月に一度支給するような場合は、1ヶ月分換算額を計算に用います。
平均賃金の計算例
次の事例で、平均賃金を計算してみましょう。
算定事由:6月15日~6月17日の3日間、会社都合休業をさせた
対象者:10日締め・当月25日支払いの従業員(月給者)
直近3ヶ月の賃金:下表のとおり
| 期間 | 支払われた賃金 | 総日数 | 
| 5/11~6/10 | 303,665円 | 31日 | 
| 4/11~5/10 | 320,850円 | 30日 | 
| 3/11~4/10 | 310,223円 | 31日 | 
| 計 | 934,738円 | 92日 | 
直近3ヶ月間の賃金総額=303,665+320,850+310,223=934,738円
934,738円/92日(3ヶ月間の総日数)=10,160.19565….
平均賃金=10,165円19銭
※平均賃金は、銭未満を切り捨てます。
「平均賃金が少ないのでは?」と訊かれたら
月給者の場合は特に、自分の平均賃金を見て「私の平均賃金は、こんなに少額なんですか?」と驚く人がいるかもしれません。
平均賃金が少額に見える理由は、分母に(所定労働日数ではなく)「総日数」が使われるためです。従業員に質問されたときは、「公休日にも賃金が割り振られた”1日分の額”ですよ」と回答すれば、納得してくれると思います。
平均賃金は、会社都合休業をしたときの「休業手当」や即時解雇をするときの「解雇予告手当」などの計算に使います。こうした手当は、従業員の生活保障の性質があるため、その従業員が実際に受けていた1日当たりの賃金(平均賃金の額)を把握する必要があるのです。
そうした意味で、平均賃金の計算は重要です。もし平均賃金や手当の計算を誤れば、遡及して差額を支払う必要があるばかりか、従業員の信頼を損なうリスクもあります。必ず正確に計算しましょう。

平均賃金の計算方法についてご不明点がありましたら、社会保険労務士にご相談ください。
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参考資料:
平均賃金の計算方法 →厚生労働省 平均賃金の計算方法
 
  
  
  
  
