同日得喪とは、60歳以上の従業員について、社会保険の資格喪失と資格取得を同じ日に行う手続きのことです。同日得喪には、再雇用の賃金低下時に速やかに社会保険料を下げる効果があります。
対象者 | 60歳以上の健康保険・厚生年金保険の被保険者 |
手続き | 「被保険者資格喪失届」と「被保険者資格取得届」を同時に提出する |
添付書類 | ・退職したことがわかる書類(就業規則の該当箇所のコピーなど) ・継続して再雇用されたことがわかる書類(再雇用時の労働条件通知書、雇用契約書、事業主の証明書等) |
※「継続して再雇用」とは、1日の空白もなく再雇用されたことをいいます。
※事業主の証明書は自由形式ですが、日本年金機構のサイトからもダウンロードできます。

同日得喪の効果
一般的に、再雇用時には賃金が低下します。
賃金の低下は随時改定の対象になりますが、実際に社会保険料が下がるまでには4ヶ月を要し、その間、賃金から控除される社会保険料は再雇用前の高額なものです。
しかし同日得喪をすれば、資格取得日(再雇用日)から再雇用後の賃金に見合う標準報酬月額(社会保険料)が設定されます。
同日得喪の注意点
ただし、同日得喪はメリットばかりではありません。
標準報酬月額が早期に下がることは、傷病手当金など健康保険の給付金や将来の厚生年金の計算に影響があるからです。人事担当者は、こうした注意点も把握しておきましょう。
同日得喪後の手取り額
定年再雇用により、賃金が500,000円から320,000円に低下した人のケースで考えてみましょう。
・再雇用前 総支給額 500,000円
・再雇用後 総支給額 320,000円
再雇用前の社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険の合計)は 74,500円です。
同日得喪を行うことで、再雇用日から、新しい賃金に見合う社会保険料 47,680円になります。
同日得喪を行わないと、再雇用後の賃金から、従前の高い社会保険料が差し引かれることになります。(下図の右側)
4ヶ月後には随時改定により社会保険料は下がりますが、このケースでは当面、手取り額に25,000円以上の差額が生じます。
図表:同日得喪の有無による社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)と、手取り額の比較

※2025年10月現在、全国健康保険協会所属の東京都の会社、扶養人数ゼロ、通勤手当なしとして筆者作成

同日得喪は、再雇用で賃金が低下したとき、社会保険料を速やかに軽減する効果があります。しかし傷病手当金などの給付額が低くなることもあります。手続きの添付書類、社会保険料と手取り額のシミュレーション、デメリットの説明など実務上の必要がありましたら、社会保険労務士にご相談いただければと思います。
→定年後再雇用について、詳しくは[再雇用とは|勤務延長との違い」をご覧ください
参考資料:
日本年金機構 60歳以上の方を、退職後1日の間もなく再雇用したとき