労使協定とは|基礎知識

「労使協定」とは、会社と労働者代表との書面による取り決めのことです。
労働基準法は、労働者保護の主旨のもと、会社側に「〇〇をしてはならない」と様々な禁止事項を設けています。「時間外労働や休日労働をさせてはならない」「休憩は一斉に与えなければいけない」等々です。

しかし、こうした条文の中には「ただし労使協定がある場合はこの限りでない」という文言が続くものがあります。 ” 原則は禁止だよ、でも労使でよく話し合って書面化すれば、罰則はないことにするよ ” というわけです。そのため労使協定の締結前には、労使の協議が必要なのです。

労働者代表とは?

労使協定は、会社と労働者代表とで締結します。
労働者代表とは、次の人をいいます。


 ・労働者の過半数で組織する労働組合がある場合…過半数組合の代表者
 ・労働者の過半数で組織する労働組合がない場合…労働過半数を代表する者

過半数組合がない場合は、労働者の代表者を選出する必要がありますが、次のことに注意してください。
・過半数とは、全労働者の過半数のことです。正社員だけでなく、パートやアルバイトも含めた人数で、過半数をカウントしてください。
・管理監督者は、労働者の過半数代表者にはなれません。
・労働者代表は、投票や挙手、話し合いといった民主的な方法で選出する必要があります。

届出義務のある労使協定は?

労使協定には様々なものがありますが、所轄労働基準監督署への届出が義務付けられているものとそうでないものがあります。下表は代表的な労使協定です。

労使協定名内容届出義務
時間外労働・休日労働に関する協定法定時間外労働や法定休日労働をさせる場合
賃金控除に関する協定賃金から税・社会保険料以外のものを差し引く場合不要
一斉休憩の適用除外に関する協定休憩を一斉に与えず、交代制等にする場合不要
年次有給休暇の計画的付与に関する協定年次有給休暇の5日を超える部分につき、計画的付与を行う場合不要
年次有給休暇の時間単位付与に関する協定年次有給休暇を1時間単位で与える場合不要
事業場外労働に関する協定事業場外労働におけるみなし労働時間を定める場合
※ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超えない場合は不要
代替休暇に関する協定1ヶ月につき60時間超の法定時間外労働があったとき、割増賃金に代替する休暇を与える場合不要
1カ月単位の変形労働時間制に関する協定1ヵ月単位の変形労働時間制を採る場合
※ただし就業規則に詳細を定めた場合は不要
フレックスタイム制に関する協定フレックスタイム制を採る場合
※ただし清算期間が1ヶ月を超えない場合は不要

上表の他にも、預貯金監理に関する協定、育児休業・短時間勤務等の適用除外に関する協定、介護休業の適用除外に関する協定、専門業務型裁量労働制に関する協定、企画業務型裁量労働制に関する協定など、様々な労使協定があります。

ここから先は、労使協定の中でおそらく最も締結数が多い「36協定」について説明します。

36協定とは

「36(サブロク)協定」は、従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合に必要とされる協定です。正式名称を「時間外労働・休日労働に関する協定」といいます。「36協定」と呼ばれるのは、この協定が労働基準法第36条に定められているからです。

労働基準法では、次の事項が禁止されています。
・法定労働時間(1週間につき40時間、1日につき8時間)を超えて労働させること
・法定休日(1週間につき1日の休日)に労働させること

しかし上記の禁止にかかわらず、36協定を締結して労働基準監督署に届け出た場合は、協定の範囲内で法定労働時間を超えて、または法定休日に働かせることができます。

ただし36協定をしても、原則として限度時間(月45時間・年360時間※)を超えて残業させることはできません。
※1年単位の変形労働時間制(対象期間が3ヶ月超)の場合は、月42時間・年320時間)

特別条項つき協定

それでも何らかの事情で、残業が法定限度時間を超えることはあり得ます。そうした「臨時的で特別な事情」が予測される場合には、あらかじめ「特別条項つき」の協定をしておく必要があります。

特別条項つきの協定を締結して行政官庁へ届け出ることにより、限度時間を超える時間外労働が許容されます。

ただし特別条項を協定した場合でも、原則として、下記が限度とされています。(一部の業種は限度時間が異なります。)
・月100時間未満(法定休日を含む)
・年720時間以下(法定休日を含まない)
・2~6ヶ月の平均が月80時間以下(休日労働を含む)
※限度時間を超過できるのは、年6ヶ月までです。

様式と提出方法

36協定届の様式は、厚生労働省のサイトからダウンロードできます。
特別条項なし
特別条項あり

36協定届の提出先は、事業所所在地を管轄する労働基準監督署です。窓口に提出するほか、郵送や電子申請でも提出できます。

なお、本社の他に事業場がある会社の場合は、本社と各事業場の協定内容が同一であれば、本社所在地を管轄する労働基準監督署へ一括して届け出ることが可能です。


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