変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じて労働時間を柔軟に設定(変形)し、一定期間を平均して法定労働時間内に収める制度です。
変形労働時間制の適用下では、あらかじめ繁忙期の所定労働時間を長く、閑散期の所定労働時間を短く設定できます。繁忙期に「この日の所定労働時間は10時間」と設定しておけば、実際に10時間労働させても割増賃金を支払う必要はありません。その代わり、閑散期の所定労働時間を6時間とした場合は、働いた時間が6時間(8時間未満)でも、欠時控除はできません。
変形労働時間制の種類
変形労働時間制には、次の4種類があります。
・1か月月単位の変形労働時間制
・1年単位の変形労働時間制
・フレックスタイム制
・1週間単位の非定型的変形労働時間制
以下、「1か月単位の変形労働時間制について紹介します。
「1か月単位の変形労働時間制」の概要
1か月単位の変形労働時間制は、1ヶ月の範囲内に繁閑の差が大きい業種に適した制度です。
例えば「毎月、月の前半だけ業務が集中する」という会社があったとします。
この会社では月の前半に残業が多く、従業員は疲労し、会社は残業手当の支払いがかさみます。
一方、月の後半は業務量が少なく、時間を持て余していたとしたら…
社長は考えるでしょう。
「月の前半は遅くまで働いてもらって、月の後半は早く帰らせてあげたいな」
この考えを実現できる制度が「1か月単位の変形労働時間制」です。
1か月単位の変形労働時間制では「月の前半の所定労働時間は9時間」「月の後半は7時間」というように、柔軟に所定労働時間を設定できます。繁忙期に労働時間を長くする代わりに、閑散期は労働時間を抑えられるため、結果として労働時間の短縮につながるのです。
割増賃金の扱い
1か月単位の変形労働時間制では、割増賃金は下表のように計算します。
1日 | ・労使協定(または就業規則)で8時間を超える所定労働時間を定めた場合は、超えた時間 ・それ以外の日は「8時間」を超えた時間 |
1週間 | ・労使協定(または就業規則)で40時間※を超える所定労働時間を定めた場合は、その超えた時間 ・それ以外の場合は「40時間※」を超えた時間 ※特例措置対象事業場は「44時間」 |
変形期間 | その期間の総枠※を超えた時間 ※総枠は下表のとおりです(特例措置対象事業場を除く) |
1ヶ月の暦日数 | 法定労働時間の総枠 |
31日 | 177.1時間 |
30日 | 171.4時間 |
28日 | 160.0時間 |
※1ヶ月の暦日数×40時間/7日
1か月単位の変形労働時間制を適用できない従業員
下記の従業員は、1か月単位の変形労働時間制で働かせることはできません。
・満18歳未満(満15歳~18歳の場合は、1日8時間・1週48時間を超えない範囲で適用可能)
・妊産婦(妊娠中または産後1年を経過しない女性)が請求した場合
また、育児や介護を行う従業員や教育訓練を受けている従業員等には、変形労働時間制の適用に際して特別な配慮をする必要があります。