従業員が加入する公的保険は、労災保険(労働者災害補償保険)・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の4種類です。労災保険と雇用保険のセットを「労働保険」、健康保険(介護保険を含む)と厚生年金保険のセットを「社会保険」と呼びます。
強制適用事業所と強制被保険者
労働保険と社会保険は、会社や従業員の意思にかかわらず、要件に該当したら強制加入となります。
強制適用となる事業所
労災保険と雇用保険
・原則として従業員を雇用する全ての事業主
(例外は、個人経営で労働者数5人未満の農林水産の事業)
健康保険と厚生年金保険
・常時1人以上を使用する法人(役員を含む)
・常時5人以上を使用する法定17業種の個人
※強制適用にならない個人事業主でも、認可を受けることにより社会保険適用事業主となることができます。ただしその場合でも、個人事業の事業主本人は被保険者になれません。
強制加入となる従業員
労災保険は、従業員の労働時間や契約期間を問わず、適用されます。パートや短期アルバイトの場合でも同様です。
雇用保険は、次に該当する従業員を雇い入れた場合に必要です。
・週の労働時間が20時間以上、かつ
・31日以上雇用する見込みがある
健康保険・厚生年金保険は、適用事業所に使用される従業員と常勤役員が加入します。パート従業員については、労働時間や会社規模によって適用の有無が異なります。
パートの社会保険加入要件
パート従業員は、事業所の規模や労働時間の長さ等により、加入するかどうかが決まります。
従業員数51人以上の会社(特定適用事業所)
・週の所定労働時間が20時間以上
・1ヶ月の給与が8万8000円以上
・2ヶ月を超えて雇用される見込みがある
・学生ではない
従業員数50人以下の会社
・週の所定労働時間および月の所定労働日数が、同じ会社で働くフルタイム従業員の4分の3以上
「51人以上」の人数は、厚生年金被保険者の数で判断します。適用事業所が複数ある法人の場合は、同一法人(=法人番号が同じ)内の全ての厚生年金被保険者数の合計人数により、特定適用事業所になるか否かが判断されます。
労働保険の手続き
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険のことです。最初の従業員を雇い入れたときは、次の手続きをする必要があります。
・保険関係成立届
・概算保険料申告書
・雇用保険適用事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
保険関係成立届
「労働保険関係成立届」を、会社(事業所)の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。事業所の所在地とは、実際に従業員が働いている場所のことで、必ずしも会社謄本に記載されている本店所在地とは限りません。
保険関係成立届には、事業所の名称・所在地・雇用する従業員数・事業の種類などを記入します。
「雇用する従業員数」は見込み人数でOKです。
「事業の種類」は、労災保険料の料率に関係するため、注意して記入してください。「労災保険率適用事業細目表」を参考にするとよいでしょう。
保険関係成立届を提出すると、割り振られた「労働保険番号」が書かれた控を返してくれます。この控は、雇用保険の手続きをするときに添付するため、コピーを取っておきます。
「保険関係成立届」の用紙は、労働基準監督署、ハローワーク、労働局などで入手できます。「保険関係成立届」と一緒に「概算保険料申告書」の用紙も入手しておくとよいでしょう。
用紙をもらうとき、窓口で「一元ですか?二元ですか?」と訊かれることがあります。建設業と農林漁業が二元適用事業、それ以外は一元適用事業です。一元適用事業は、労災保険料と雇用保険料をセットで申告しますが、二元適用事業は別々に申告する必要があります。
概算保険料申告書
概算保険料申告書とは、その年度の労働保険料(労災保険料と雇用保険料)の見積額を申告する書類です。概算保険料は「その年度の賃金見込み額」に労災保険料率と雇用保険料率を乗じて算出します。
最初の従業員を11月に雇い入れた場合、11月から翌年3月までの賃金見込み額に、労災保険料率と雇用保険料率を乗じることになります。
雇用保険適用事業所設置届
会社自体を雇用保険の適用事業所にする手続きです。事業所所在地を管轄するハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」を次の書類をとともに提出します。
添付書類:
・労働保険関係成立届の控コピー
・会社謄本(個人事業の場合は事業主の住民票)等
雇用保険適用事業所設置届を提出すると、事業所の雇用保険番号や適用年月日などが記載された「適用事業所台帳」が交付されます。雇用保険事業所番号の確認に使用されるため、大切に保管しておきましょう。
雇用保険被保険者資格取得届
入社した従業員個人を雇用保険に加入させるために「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所所在地を管轄するハローワークに提出します。
雇用保険被保険者資格取得届が受理されると、雇用保険証と雇用保険資格取得確認通知書が交付されます。
社会保険の手続きをする
まず、会社自体を健康保険と厚生年金保険の適用事業所にする手続きをし、併せて従業員(役員)と被扶養者を保険に加入させます。
新規適用届
会社に社会保険を適用させる手続きです。次の書類を事業所所在地の年金事務所(または事務センター)に提出します。
・新規適用届
・会社謄本(履歴事項全部証明書)
・法人番号を証する書類 法人番号指定通知書の写し
※個人の場合は事業主の世帯全員の住民票(個人番号の記載がないもの)、代表者の租税公課の領収書
・賃貸借契約書の写し(登記上の所在地と実際の事業所所在地が異なる場合)
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届、被扶養者届
従業員個人を健康保険や厚生年金保険に加入させる手続きをします。従業員に被扶養者がいる場合は、被扶養者や第3号被保険者に関する手続きも必要です。
・健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届
・被扶養者(異動)届